企業が子どもたちの未来にできること
- yasuhirosasakisony
- 5月19日
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今年2月、NPO法人沖縄青少年自立援助センター「ちゅらゆい」が沖縄県那覇市で開催した講演会「子どもたちの未来に今、何ができるのか~企業連携のこれからを考える」に登壇しました。
企業が子どもたちをサポートしている団体への支援を考えるとき、寄付を行うことが真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、それ以外にもさまざまな方法があります。たとえば、子どもたちに企業訪問する機会を提供し、ビジネスの現場を見るような職業体験、または企業の強みを生かしたワークショップの提供などにより、子どもたちが将来について考えたり、自身の好きなことや得意なことを見つけたりするきっかけになります。
私は、企業、そして社員が社会に目を向け、貢献をすることが当たり前になるためには、企業の文化として根付かせる土台づくりが必要だと考えています。私がソニーの社長時代に入社式でいつも言っていたのは、皆さんはソニーの一員であると同時に、一人の社会人であるということです。目の前の業務にくわえて、社会の中の一個人としてもどのような貢献ができるか、常に考えて欲しいと伝えていました。企業が社会貢献活動を行うことは、企業側にもメリットがあります。なぜなら、社員が自分の仕事や働く会社が社会に良いインパクトを与えていることを誇りに感じ、エンゲージメントや意欲が高まるだけでなく、企業としての信頼や評価にもつながるからです。
こうした考えのもと、リーダー自身が、会社の枠を超えて社会のリーダーとしての自覚を高め、社会への活動に積極的な姿勢を見せ、さらには社員の取り組みを後押しすることが重要です。社員の皆さんも、社会に貢献したいという想いをリーダーに積極的に働きかけることが大切でしょう。こうした積み重ねの上に、企業と団体が相互にメリットのある形で長期的な視点で連携していくことが、これからの企業連携のありかたではないでしょうか。これは沖縄県に限らず、全国的に共通する課題です。
沖縄県の特異な点として、米軍基地の存在が挙げられます。島が小さいため、基地の入口が至るところにあり、戦闘機の音も頻繁に聞こえます。経済的にも東京などと比べて厳しい状況にあります。内閣府のデータによれば、沖縄県は一人当たりの県民所得が全国で最も低く、生活保護の受給率やひとり親家庭の割合が高いなど、貧困の実態は深刻です。こうしたデータの背景には、戦争の影響、歴史的に続く民族的差別、さらには戦後の復興に必要な財源がうまく回ってこなかったという現状があります。課題は複雑で、一つ解決すればすべてが片付くというような単純な問題ではありません。だからこそ、とにかくできるところから一つひとつ行動を起こしていく必要があります。これは官民問わず、共に取り組むべき課題だと感じています。
沖縄の琉球文化は、中国や日本との交流によって育まれました。特に沖縄の音楽は非常にユニークで、耳にするたびにその魅力を実感します。琉球の工芸品「やちむん」の素朴な柄も好きですし、伝統的な織物「芭蕉布」は涼しく柔らかで夏に愛用しています。なかでも「沖縄そば」は大好物で、あの独特の出汁の風味と食感は格別です。こうして沖縄の文化や暮らしに触れていると、その魅力に惹かれます。ただ、温かい気候や美しい海といった表面的な魅力だけでなく、そこに刻まれてきた重い歴史があることも、私たちは忘れてはなりません。沖縄の文化と歴史の両面を理解し、リスペクトすることが重要です。
Project KIBOはちゅらゆいと連携して、沖縄の子どもたちが北海道へ行くスタディツアーの支援や映画鑑賞の提供をしてきました。今後も支援を継続しつつ、私個人はこうした講演の場を通じて、企業が子どもたちの未来に何ができるのかについて、積極的な発信をしていきたいと考えています。
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