日本における少子化が深刻な課題になって久しく、その対策は急務となっています。政府が現在力を入れて進めている対策には、出生率を上げるための政策や子育て支援、欧米主要国と比べて遜色のない教育水準を確保するための教育投資、子どもの相対的貧困を減らすための取り組みなどがあります。
どれも早急に実行フェーズに移してほしいと願いますが、すべて実施されたとしても課題の本質に対して十分に対処できるわけではないと考えています。特に出生率の低下は、政治家の皆さんや我々のような団体だけでは解決できない重要な問題です。ご存じのとおり、主要先進国はどこも同じ悩みを抱え、さまざまな取り組みを行っていますが、出生率を上げることができていません。フランスのように若干成功している国もありますが、近隣の韓国では1人の女性が一生のうちに産む子どもの数の指標である合計特殊出生率が1人を切っており、日本では東京都が初めて1人を切って0.99となりました。
昨年の厚生労働省のデータによれば、総人口は2070年に9,000万人を割り込み、このうちの高齢化率は39%の水準になると推計されています。2024年9月1日現在(概算値)の総人口1億2,378万人からこの数字までソフトランディングしていくにあたり、私たちは現実的なシミュレーションができているでしょうか。低い出生率が社会にどのようなインパクトをもたらすのか。私を含め、老若に関わらず皆で、積極的な議論の展開をすべき時が来ていると強く感じています。
そして、残された課題にアプローチするにはどうすればよいのでしょうか。それは、現実から目を背けず、直視するところから始まると考えています。たとえば、出生率が今と同水準、もしくはより低下することを前提にした積極的な議論も必要ではありませんか。多様性、ダイバーシティを尊重する社会で、産まない選択をすることも当然の権利です。一方で、解決しなければならない本質的な原因を、近視眼的な目先の物事だけでとらえず、社会全体が広い視野と寛容な心を持って、今後の30年を見据えて考えなければなりません。
まずは一人ひとりが当事者意識を持ち、各々の立場で前向きに考えてみること。これが、私たち大人と笑顔あふれる子どもたちの明るい未来への第一歩になると信じています。
参考データ:厚生労働省 /総務省統計局
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